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2019/12「好奇心」
霊長類といいますが、生物学的観点から見れば、サルも人も同じ種に属すると言われています。

その中でチンパンジーが人間に最も近いサルの仲間(種)になります。人間に一番近いチンパンジーと人間との決定的な違いがあるのは、子育ての期間がチンパンジーは短くて、人間の子育ては非常に長い期間が必要だということです。チンパンジーは生まれてすぐに歩けるし、親サルと同じ行動がすぐに出来るようになります。

人間の赤ちゃんは歩きだしたり、ことばが出るようになるには、ほぼ一年以上かかります。チンパンジーの寿命はほぼ50年だそうですが、こどもが生める体に成長するのは10年だそうです。人間の体はそうはいきません。人間の赤ちゃんは子どもの期間がかなり長くなります。人間はもともとサルの仲間ですが、長い間の自然への順応と進化の結果そのようになったのだと思います。注目すべきは、チンパンジーは短い子どもの期間、親ザルや群れに囲まれ自然の中で戯れ(遊び)ながら短い子どもの時期を過ごして一人前のチンパンジーに成長するのです。

さて、この話で大切な教訓があります。チンパンジーよりもずっと長い人間の子どもの時期をどう過ごさせるのかということであります。昔のことわざに「七歳までは神の子」というのがあるそうです。
このことわざは七五三にまつわることわざだそうですが、私の保育の恩師である先生が、「八歳までは神(大自然)の子」と言いかえて私に保育の話をしてくださったことを思い出します。八歳は昔の八歳で今は六歳のことです。つまり小学校へ入学する前、幼児教育の時期と一致します。この時期は大自然に育てられる時期で、自由に遊ぶことを主体に置き、自由奔放に遊ぶことを中心に、不自由さや制約を与えない遊びが必要な時期なのです。

ある発達心理学の先生は、それは六歳ではなくてむしろ八歳なんだとおっしゃいました。小学校二年生までは遊びを主体に置いた日常が子どもの正常な育ちには必要だとおっしゃっていました。つまり、発達心理学では小学校一年生から教科授業をするのはまだ早いのだともいっておられました。チンパンジーが赤ちゃんもしくはこどもの時期を大自然の育み(はぐくみ)の中で育っていくように、人間の赤ちゃんも少なく見ても六歳までは神(大自然)の子として育てなければいけないとその時思いました。

この度 吉野 彰さんがノーベル化学賞を受賞されることになりました。インタビューの中で何度もおっしゃったことは、「好奇心」というワードです。好奇心なるものは、教えるという営み、あるいは遊びを強制するような場面で養われるものではありません。もちろん遊びの環境や場は大人(もしくは保育者)が準備するものですが、その中で子どもがたくましい創造力を発揮し、できるだけ制約のないところで、自らが主体的に遊ぶことで、数えきれないほどそこに散らばっている面白いことに子どもの好奇心が増幅されることによって好奇心というものは養われていくものであります。

もしあなたのお子さんに好奇心やそれを支える興味や関心を身につけさせてやりたいとお思いなら、子どもにとって本当に面白い遊びを主体に置いた日常を過ごさせてあげることが一番大切だと思います。 そんな時、いつも耳にするのは「どうして遊ばせていいのかわかりません」です。そんなのは子育て放棄というものです。もし保育者でありながら「どうしてそのような保育をしていいのかわかりません」というのは保育放棄です。

「どうして」という部分に最大の努力を傾注しなくては、結局は子どもの育ちを阻害してしまっていることになるのではないでしょうか。 南無阿弥陀佛(輪番)

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