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2022/2脳内汚染
ある先生から『脳内汚染』(岡田尊司著)という本を紹介していただきました。その題名に聞き覚えはありましたが、「汚染」ということばから食物等で体内にとり込まれた農薬や添加物が、脳細胞に悪影響を及ぼすことかと勝手に思い込んでいました。

ところが、そこに書かれていたことは、所謂、ファミコンに代表される家庭用ゲーム等で長時間あそび続けることによって脳が侵される。特に幼児期は、脳の感受性が最も高いだけに、影響を受けやすいという警鐘でした。
子どもは概して、素早い反応を要求されるゲームを好み、大人顔まけの早さでキーを連打し、敵を倒し、乗り物や武器を操作します。

そんな姿に周囲は「すごい!」と賛美しがちですが、ゲームはやるかやられるか必死に戦う時に、交感神経からアドレナリンが血液中に放出され快感を得る。また、敵を倒すと脳内にドーパミンが放出され、気分が高揚する。ドーパミン・レベルの上昇は快感になるが、同じ刺激では飽きてくるので、どんどん強いを求めることになる。そこに中毒化や依存症となる危険性があるといいます。

また、反射的な操作を習得すればするほど、「考えたり、判断する前頭葉」を使わない回路が出来て、前頭葉の機能低下となり、そこから共感性や社会性の低下という大きな問題が発生してくるということです。

また、ゲームの制作者の公然の秘密として、
①ゲームを終了させる ②競争 ③熟練 ④探求 ⑤高得点
と五つのポイントがあり、各部でどれだけ、アドレナリンを出させられるかが商品開発の戦略となっているそうです。
「ゲームは最高の英知を傾けて制作された一種の合成麻薬だ」との言葉に、知らない事の怖さを感じました。

さて、幼児期は、脳が活発に活動するので、ちょろちょろと目まぐるしく動きまわるものです。おとなしいとかえって、何かいたずらをしているのではないかと心配になりますが、いたずらこそ、最高のあそびなのではないでしょうか。
一般的に保育とは、幼児を保護、養育し、育成することと理解されていますが、加速度を増して進歩発展する今日、私たちは幼児の何を保護し、養育しょうとしているのか、確かめる必要があるのではないでしょうか。

時代が生み出す問題をしっかり踏まえる重大さを、この一冊の本は教えてくれました。
(大谷保育協会機関紙「真宗保育」より 執筆者 アソカ幼稚園靍見美智子氏)

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